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コラム 血管性認知症


2020年、認知症の患者数はおよそ600万人、そのうち20%、約120万人が血管性認知症と推計されています。

原因

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの血管障害によって脳の神経細胞が破壊され、その結果認知症を発症します。小さな脳梗塞を繰り返して発症する場合もあれば、一回の脳梗塞であっても認知機能にとって重要な部位(戦略的部位と言います)が障害されれば認知症を発症します。Binswanger病では脳の白質という部位に広く血流障害が起こる特殊なタイプの血管性認知症です。



症状経過

血管性認知症以外の認知症でもよく見られる症状
1.遂行機能障害
遂行機能とは物事を計画立てて実行することです。例えば料理を作る手順が分からなくなります。
2.記憶障害
アルツハイマー型認知症に比較して早期はあまり目立ちません。
3.見当識障害
場所、時間、季節の感覚がうすれてきます。例えば季節に合わせた服が選べなかったり、よく知った場所から帰れずに迷子になったりします。


血管性認知症に比較的特徴的に表れる症状
1.感情失禁
感情のコントロールが難しくなります。急に怒ったり、悲しんだりします。うつ状態になることもあります。
2.症状の変動
1日の中でも良い時もあれば悪い時もあるなど症状に変動があります。
3.まだら認知症
血管性認知症の場合損傷を受けていない領域の機能が良く保たれているため、出来ることと出来ないことの差が大きい事が特徴の一つです。

他にも手足の麻痺や言語障害、知覚障害などを伴う事もあります。


脳梗塞を繰り返し多発する多発脳梗塞タイプは階段状に症状が悪化していきます。ラクナ梗塞と言う微小梗塞が徐々に増えていくタイプのものは緩やかに悪化していきます。




診断

多くの場合はCT MRIなどの画像検査で診断します。症状の出現時期や、現れている症状と画像所見が一致していることが診断では大切になります。
アルツハイマー型認知症との合併が多く、注意深く鑑別がなされます。



治療

薬物治療は大きく分けると3つあります。
1.認知機能障害に対して
アルツハイマー型認知症で用いられる、ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロンパッチ)といったお薬は臨床試験でもその有用性が明らかになってきています。ただし血管性認知症はそもそもアルツハイマー型認知症の合併が多いことも作用していると考えられています。
またニセルゴリン(サアミオン)というお薬は複数の臨床試験で認知機能の改善が示されています。
2.BPSD(行動・心理症状)に対して
上述のニセルゴリンは意欲が改善することが示されています。また他のBPSD(行動・心理症状)に対してもリスペリドン、チアプリド、抗うつ薬などが用いられます。
3.再発の予防に関して
血管性認知症の場合、血管障害を予防することは何よりも大切なことです。
血管性認知症の危険因子として加齢、運動不足、脳卒中の既往、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、心房細動、喫煙、が挙げられています。
特に高血圧は強い危険因子として知られています。
また心房細動という不整脈がある方は心臓に血栓を生じやすく、その血栓が原因で脳梗塞を発症しやすくなります。積極的な抗血栓療法が必要になります。


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