早期発見が重要(軽度認知障害)
軽度認知障害(MCI)
日本では高齢者の4人に1人は軽度認知障害(MCI)もしくは認知症と言われています。
軽度認知障害(MCI)とは、認知症の一歩手前で物忘れなどの症状も軽く、認知症と正常の中間の状態をいいます。基本的な日常生活は保たれており認知症ではないのですが、軽度の認知機能の障害がある状態を言います。
軽度認知障害(MCI)の段階であれば年率14〜44%の割合で正常に戻る可能性がある一方で、年率5〜15%で認知症へと移行してしまいます。認知症へ移行後は現在の医学では正常化を目指す治療は難しくなります。
診断
軽度認知障害の診断はDSM-5、ICD-10といった診断基準を用いながら他の疾患を除外していくことで行われます。
そのために詳細な問診や心理検査が重要になります。さらにCT、MRIなどの画像検査で出血などの病変の有無を確認したり、血液検査などで内分泌異常やビタミン欠乏などが無いかなどを検査します。
軽度認知障害(MCI)の段階では本人はもとより、周囲の方も症状に気づかないことがほとんどです。そのため症状の変化に気づき、医療機関を受診されるのは軽度から中等度の認知症の段階といわれてます。まだ回復の可能性がある軽度認知障害の段階で診断を受けることが望ましいと考えられます。
軽度認知障害(MCI)を疑うきっかけ
日常生活の中で認知機能の低下を疑うきっかけとなる例を以下に示します。
・最近起こった出来事の内容は覚えていても、「いつ」や「どこ」といった詳しい内容を思い出せない
・約束を忘れるようになった
・外出時、服に気を使わなくなった
・趣味への関心が薄れた
・鍋を焦がしたり、凝った料理をしなくなった
・同時に2つ以上のことが出来なくなった
・何度も同じ質問をする
・新しい機械の使い方や仕事が覚えられない
・依存傾向が強くなったり、怒りっぽくなった
軽度認知障害(MCI)を診断するメリット
軽度認知障害(MCI)は認知症の前段階とされていますが、その後の認知症への進行を完全に予防する根本的な治療法はみつかっていません。
一方で、認知症へ移行する可能性がある、という事を知ることは、その先のライフスタイルを設計する上で、大きな意味を持ちます。
治療法が見つかってないとはいえ、認知症を発症する要素は色々と知られてきています。以下のような取り組みを行なっていくことで少しでも認知症発症リスクを軽減させることも可能でしょう。
・高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の是正に取り組む
・社会性を増すために人と交流する機会を増やす
・頭を使う趣味に取り組む
・禁煙
・適度な運動
・食生活においては炭水化物を主とする高エネルギー食、低蛋白食、低脂肪食は認知障害のリスクを高めます
・過度な飲酒を控える他、赤ワインには認知症発症を抑える効果が知られています
またカレンダーやノートに予定や出来事を記録するmemory support system(MSS)は軽度認知障害者の生活の質や自己効力感を改善することで知られています。カレンダーやノートを使う習慣を身につけることは将来認知症に進行した場合も役に立つことです。
何か少しでも変化を感じるようであれば、かかりつけ医に相談してみてください。
当院でも認知症相談は随時受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。